後ろにつんのめりそうになりながらも、桐原さんは何とかバランスを保って振り返った。


「ま、真下さんっ?!」

「あのっ!これ――」


赤いリボンのかかった包みを勢いよく差し出した。


桐原さんはぽかんとした顔をしている。


「レギュラーが決まった、お祝い、です」


勇気を出してそう告げると、桐原さんは手にしていた紙袋を床に降ろし、両手で包みを受け取った。



「――ここで開けても、いいですか?」


抑え気味の低音ボイスに、私の胸が震える。


あまりの高揚に声が出せず、私はだまってうなずいた。


桐原さんが穏やかな笑みをたたえながら、丁寧に包みをほどく。


――そして



「……ブレスレット」


「はい。その……赤と黒のデザインが、今回の衣装のコンセプトに合ってると思って――」


桐原さんはその場で左手首にブレスレットを巻くと、得意げに左腕をかざし、大きく光る紅玉をその目に映した。