ふと部屋の姿見に映る自分に目を遣る。



声の魅力に取り憑かれて間もない小学生の頃、一度だけ友人にこの性癖を打ち明けたことがある。

友人のあからさまに不快な表情を見て、私は即座にその場をごまかした。


以来、誰にもこの趣味を口外したことはない。


小学校高学年の頃から群を抜いていた身長のおかげで、中学入学と同時にバレーボール部に勧誘された。

気が付けば部の主将を務め、高校でもバレーを続けた。

おかげですっかり筋肉質な身体になってしまい、今でもスポーツクラブに通っているほどだ。

引き締まっていると言えば聞こえはいいが、がっちりした体躯は、すっかり《体育会系》である。


(そんな私が、ヘッドフォン片手に部屋で小さくなってるなんてね)


誰にも想像できるはずがない。


大好きな声たちが詰まったCDと、こだわり抜いて選んだヘッドフォンがある、この寝室だけが、本当の私を解放出来る唯一の場所。


気が付けば、BLなどというアングラな世界にまで片足を突っ込んでいて。


思わず一人苦笑してしまう。


“応援してくれる気持ちには感謝してる”――


そう言ってくれた桐原さんが、こんな私の姿を知ったらどう思うだろう。


やはり気持ち悪いと思うだろうか。