この手の質問が一番厄介なので、予め答えは用意してあるのだが――


「“体を動かすこと”でしょ?まったくいつまでも華のない答えですこと」

「ううっ……」


またしても部長に先手を取られてしまう。

さすがに入社以来面倒を見てきてもらっただけあって、こちらの手の内はすっかりバレている。

それで自分の手札は一切見せないのだからお見事だ。



「あ!そう言えば、最近僕すごいサイト見つけたんですよ」


突然、三田君が手元のスマフォをいじり始めた。


「じゃーん♪“桐原周也非公式ファンサイト”!」

「ぶっ……!!!!」

「へー。すごいじゃない。彼、人気あるんじゃない」

「いやいや、このサイトの管理人さんがマニアックなんですよ。ほら、名前付きの役なんてほとんどないでしょ」


「名前付きの役が少なくて悪かったな」


高い位置からドンとサラダを盛った大皿が置かれる。

もちろん声の主は桐原さんだ。


「残念だったな。お前のケータイじゃサイト見れないもんな」

「ケータイなんて通話とメールが出来れば十分なんだよ。それに、インターネットの情報なんてロクなもんじゃないし」


取り分け皿を無造作に置きながら放たれた桐原さんの言葉が、深く私の胸を抉った。