(やっぱりこの店なのか……)
諦めてその安っぽいガラス戸を開くと――
「へい、らっしゃい!!」
その瞬間、私の腰がくだけた。
声が別段大きかった訳ではない。
だって――だって、この声は。
「ま、真下さんっ?!」
二ヶ月ぶりの生声は、殺人的に胸を貫く。
目の前で突如崩れ落ちた私に、さすがの部長も慌てて駆け寄ってきた。
「真下?!どうした?貧血?気分悪い??」
「い、いえ……ちょっとヒールが滑ったみたいで……」
まさか“あまりにも好きな声すぎて”などと言えるはずもなく、慌てて取り繕う。
立ち上がろうとすると、力強く腕から引き上げられた。
顔を上げると、そこにはやっぱり――
桐原さんがいた。
派手なハッピに身を包んでいるものの、トレードマークの黒のセルフレーム眼鏡は相変わらず。
髪は少し伸びただろうか。
全体的にゆるくパーマがかかったようなくせっ毛が目に掛かっている。
諦めてその安っぽいガラス戸を開くと――
「へい、らっしゃい!!」
その瞬間、私の腰がくだけた。
声が別段大きかった訳ではない。
だって――だって、この声は。
「ま、真下さんっ?!」
二ヶ月ぶりの生声は、殺人的に胸を貫く。
目の前で突如崩れ落ちた私に、さすがの部長も慌てて駆け寄ってきた。
「真下?!どうした?貧血?気分悪い??」
「い、いえ……ちょっとヒールが滑ったみたいで……」
まさか“あまりにも好きな声すぎて”などと言えるはずもなく、慌てて取り繕う。
立ち上がろうとすると、力強く腕から引き上げられた。
顔を上げると、そこにはやっぱり――
桐原さんがいた。
派手なハッピに身を包んでいるものの、トレードマークの黒のセルフレーム眼鏡は相変わらず。
髪は少し伸びただろうか。
全体的にゆるくパーマがかかったようなくせっ毛が目に掛かっている。