目の前でがっくりと肩を落とす私に、桐原さんは何か思い違いをしたようだった。


「やっぱりがっかりさせちゃったじゃないですか。だから俺は言いたくなかった――」

「“言いたくなかった”――?」


思わずぐっと語気を強めてしまう。


「それって、ご自身の仕事を恥ずかしいと思っているってことですか?!舞台じゃなくて、声だけの仕事だから?」


この私の物言いに、一見穏やかそうな桐原さんも声を荒げて応戦する。


「!!違いますよ!俺は、たとえ声だけの出演であったとしても、役者である自分の仕事に、誇りを持って演ってます!!」


周囲の目も気にせず、私達のテーブルはどんどんヒートアップしていく。


「じゃあなんで“言いたくない”なんて言い方――」

「……!それは――」


何故だか、急に恥ずかしそうに、桐原さんの言葉が詰まった。

と同時に、突如現れた2人の静寂に、それまで途切れていた周囲の雑音が、わっと波となって押し寄せる。

そのあまりの煩さに、私達は落ち着きを取り戻した。


「――ごめんなさい――私」

「……たんですよ」