それらの歓声を受ける桐原さんの態度も堂々としたもので

【今日は楽しんでいってくださーい】

などと言いながら、会場の隅々にまで手を振り返している。


バッシングがあったとは思えないような人気ぶりに、安堵の前に思わず圧倒されてしまった。


黒と赤の縦縞シャツに、黒の細ネクタイ、探偵さながらの中折れハット、そして腕に光る紅玉のブレスレット。


「ヤバい!桐原さんちょーかっこいい!!」


とはしゃぐ女の子たちを眺めながら

(「あのブレスレットは私がプレゼントしたものよ」)

と言いたい衝動がこみ上げてきてまたまた自己嫌悪に陥る。


駄目だ――桐原さんが絡むと、どうしようもなく感情がブレて落ち着かない。



「「きゃーーーーー!!たっくーーーん!!」」

「「巧臣ーーーー!!!」」


上野さんの登場に、会場の空気が一気に持って行かれる。

それと比べてしまうと、桐原さんに向けられた歓声は悔しいくらい大人しい。


【はーい♪すごい倍率の抽選をくぐり抜けてきたラッキーガールたち☆よっろしっくね~☆】


コメントの返しも慣れたもので、会場は一気にヒートアップ。


こうも簡単に人気の差を見せつけられると、怒りにも似た感情が込み上げてきて。



せっかくのイベントだというのに、私は自己嫌悪を繰り返していた。