(それにしても、相変わらず良い声してるなー)


他愛のないラジオのおしゃべりなのに、彼の声だけ耳から胸へと降り積もって、熱を伴う。

バカップルと言われればそれまでだが、例えこういう関係にならなかったとしても、私は彼を追い続けていただろう自信はある。


そう考えると、ふと不安な感覚に陥った。


確かめるように、彼からのメールを再び開いてみる。



“送信元:桐原周也”



(……良かった、夢じゃない)




【いよいよ近づいてきたね~プレミアム上映会!】


ヘッドフォンから多岐川さんの透き通った声が流れる。

声優陣の中でも大ベテランであって、更にその司会進行役にも定評のある、桐原さんの事務所の先輩。

桐原さんは、この多岐川さんとのツートップメインパーソナリティーという名目だが、はっきり言って多岐川さんの仕切りに付いていくだけ。

実際“ラジオの収録は未だ慣れません”という一文のメールを受け取ったこともある。


【そーですねぇ、もうすぐですねぇ】
【しゅーやんもう顔がこわばってるよ(笑)本当、このイベント決まってからずっと緊張してるよね】
【そりゃそーっすよ、初めてですもん。人前であんなこととか……】
【あはは(笑)まだ内容言えないからあれだけど、ま、気持ちは分かるよー。でも、ほら、ずっと舞台やってたじゃーん?実際始まったら絶対楽しいって。】
【――ですよね。楽しみたいし、楽しませたいです】
【それそれー!それ大事だよねー。……さて、残念ながらこのイベントは抽選で当たった方のみのご参加とさせていただいております。応募は既に締め切っておりますので、予めご了承くださーい。では、今週はここまで!せーの】
【ビリケン!公式ラジオ】
【たっきー&】
【しゅーやの】
【【ビリビリ放送局でしたー】】
【また次回!お会いしましょう~】