ふるふると首を横に振る。


どちらも彼は悪くない。


彼と知り合いなのを良いことに調子に乗って、お祝いと称して自分が一番楽しんで……だから罰が当たったのだ。

年上ぶってセッティングした高級レストランで、酒に酔って潰れるなんて最低にも程がある。


「じゃあ、なんで返信くれなかったんですか」

「……」

「真下さん――」

「……あの――声を送ってくれたってことは、あの部屋……見たんですよね」


顔を上げずに問いかける。

もう駄目だ、やはりあの場所にとどまっていることなんて出来ないのだ。

桐原さんはそういう人だ。


有名大学を中退してまで目指した役者の道。

その道を堂々とまっすぐ前を見て歩いている。


そんな人が人との関係をフェイドアウトで終わらせるなんてこと、するはずがない。


「あの部屋って、寝室・ですよね。確かに見せていただきましたけど、俺は決して真下さんにやましい気持ちで手を出したり――」

「そーゆーことじゃなくて!」


思わず声を荒げた。

こうなったら自分も覚悟を決めるしかない。


「あの趣味全開の部屋を見て、どう思ってるんですかって聞いてるんですよ!」