「……はぁ。いったい何があったっていうのよこの子は」


翌朝、サングラス姿の私に会うなり、レナは会社の化粧室に私を押し込めた。


サングラスを外した、ぼっこり瞼の私を見て全てを察したレナは、瞼の腫れが目立たないというアイメイクを施し、PC用だという赤い縁のメガネを手渡した。


(メガネ……)


メガネひとつで桐原さんのことを思い出してしまい、ぐっと下唇を噛む。

呆れたレナが、もう何度目かの深い息を吐いた。


「とにかくね、1月だってのにサングラスはないでしょうよ。もうちょっと考えなさいよね」

「ごめんなさい……」

「とにかく仕事仕事!忙しいんだからしっかりしなさいよっ」


ばんばんと強く背中を叩かれて自部署に戻れば、レナの言うとおり決算を控えた部内は目まぐるしい忙しさで、彼のことを考える余裕など微塵もなかった。


昼食もデスクで手早く済ませ、次に時計を見た時には午後6時。

さすがに一息つこうと携帯を開くと


(着歴8件?未読6件?――全部桐原さん?!)


何事かとメールを開こうとするが



「真下さんっ!メディアのデータがまだアップされてません!」

「え」

「昼前に督促のメール送っといたんですけど……」

「メールじゃ駄目よ、電話して、電話」


手にした携帯を脇に置く。

今日中にアップして貰わないと困る請求データだ。