あなただけを愛したい

初めて柑那と二人で来た海。


あの頃はまだ、柑那の名前を“亜衣”だと勘違いしていた頃で……


でも、隣にいることがほんとに嬉しくて仕方なかった。



砂浜を走るけれど、砂に足をとられてなかなか前へ進まねぇ。


しかも、そのせいで足ばかりが疲れていく。



あー、くそっ!



こんなことなら、部活中に生徒と一緒に俺ももっと体力をつけとくんだった。



ふと、視線をあげたとき……


少し先だけれど、人影が見えるような気がした。


幻覚?



「柑那!柑那!」



俺の声に、その影が動いた。


あれは、きっと柑那だ!



そう思ったら、胸がどきどきと動き始めた。



「柑那っ!」


「航っ!」



今度は、返事が返ってきた。


さらに胸の鼓動が早くなるのを感じながら、俺はその影へと走り出していた。







《大切なもの》fin