* * * 「――俺、お前と別れる気ないよ」 言った佐野くん。 「えー、説得力ないよー」 ケラケラ笑えば、彼は眉を顰めた。 「……なんでだよ」 声を荒げる佐野くん。 「……あのね、」 「…………」 「菜乃子、ズルイ子なんだよ」 ズルイんだよ、菜乃子。 だって知ってたもん。 全部、全部。 ――佐野くんの一番は、昔から陽ちゃんじゃないか。 そして、陽ちゃんは教えてくれなかったけど。 必死に嫌いなふりしてたけど。 菜乃子には分かったよ。