キミの知らない物語。【完】




――雷まで鳴ってるって……。



「割と、ち、近い……?」



あは、と無理に笑顔を作るけど、体は小刻みに震えだして、自分を抱きしめるように腕をまわし、落ち着けあたし、と自分に言い聞かせた。



落ち着け落ち着け落ち着けあたし。焦ってもいいことなんか一個もないんだから。大丈夫、大丈夫……、じゃ、ない。



――駄目なんだよ、あたし。雷は。


昔家の近くに落ちたことを思い出し、身震いする。


嫌だ。怖い。雷だけはどう頑張っても苦手なんだよ。駄目だ。無理。


ぎゅうっとカバンを抱きしめる。


空腹なんてもう気にならないくらい、他のことは何も考えられないくらい。


お願い。助けて。誰でも良いから。雷、止まれ。



「――っ、はー……」



大きな音と共に、二度目の雷が落ちた。瞬間、涙が溢れ出す。


――なに、泣いてるんだ。


思って、止めようとするのに止まらない。