自転車を並べて走っていると、智哉が聞いてきた。


「綾華、一度着替えに家に帰る?」


「ううん、私服持ってきたから、駅ビルのトイレで着替えるつもり。
でも、私服に着替えて居酒屋に集合って……、お酒を飲むってこと、だよね?」


あたしは今まで、アルコールを飲んだことはない。


小さい頃、お父さんがおいしそうにビールを飲むのを見てて、

「ちょうだい」

と、ひと口もらって、あまりの苦さに吐き出したのが、唯一の経験だ。


「あぁ、アイツらはそのつもりだろうけど、イヤなら、ジュースとかウーロン茶とか飲めばいいんだよ。
本来、飲んじゃダメなんだから」


「そうだよね……」


「俺も、遼ちゃんに、匂いでばれたらマズイから、飲まないつもりだし」