「彼氏?」


「え?」


智哉は数歩先で、無表情にこちらを見ている。


「あ、いや、今のクラスメート」


他に言いようがなくてそう答えると、男はあからさまに嬉しそうにニヤけた。


「なーんだ、ただのクラスメートか。
綾華、今、帰るとこ?
暇なら、メシでもどう?」


下心見え見え。


だけど今は、たとえ相手がコイツじゃなくても、そんな気分じゃない。


「悪いけど、今日はちょっと……」


そう断ると、ちょっと残念そうな顔を見せた男は、それでもすぐに立ち直って、


「じゃ、今度みんなで集まろうーぜ。
俺、みんなに連絡して、綾華も誘うから」


なんて、食い下がってきた。