一歩でも動けばやられてしまいそうな緊迫した状況、哲平の気持ちは無秩序に混乱していた。
冷静な陸でさえ立ちすくんでいる。

このままじゃ確実に、殺される。

「殺しはせぬよ」

サタンは玉座に座ったまま、厳粛に言った。

「私たちは部下どもとは違う。おとなしくパワーストーンを渡せばみな解放してやろうではないか。
我らの目的は世界支配だからな。従兵は多いほうがいい」

ルシファーも腕を組んでふんぞり返っている。

「まずはリーダーキラレッド。
お前が決めろ、ここで全員死ぬか、パワーストーンを差し出すか」

額から真っすぐに汗が落ちる。

悠月と陸は黙って哲平を見やった。

どうする?

いや、悩むことではない。俺には今を見捨てることはできない。

そっと胸に手を当てる。

取り出し方なんて知らなかったが、願うだけで、それは現れてきた。手で覆うようにしていたものを、やがてひるがえす。

パワーストーン。

哲平の手のひらで浮いている。

きらきら煌めいてあたりに光をもたらす。その神々しさでさえ、悪魔は怯んでくれなかった。