赤い狼と黒い兎Ⅱ




ドアから顔を覗かせるその人に見覚えがあり、少しだけ、息を呑み込んだ。


なんだか…、少しやつれた…?




「―――…いつか来ると思ってたよ」





もう声なんて覚えていなかったけれど、でもこんなしゃがれた声ではなかったハズだ。


数年で、何かあったのか…?




『……お久しぶりです、“歩南”さん』




浅く会釈すれば、歩南さんはにっこりと微笑んだ。


ああ、笑った顔は昔と変わらない。




「立ち話もなんだし、中へ入りないよ」

『急に押し掛けてすいません』

「いやいや。俺らこそ悪いね、総会にも顔出してやれなくて」




申し訳なさそうに目尻を下げる歩南さんにあたしは頭を振り「失礼します」と部屋へ入った。




「茶出すから、テキトーに座ってて」

『はい』




テキトーって言われても…。こんな狭い部屋に男3人で住んでるのか?どれだけ厳しい生活してるんだよ。




「な…歩南さんって」

『ん。先代だよ。瑠宇と同じ代』

「やっぱり…。前もって言えよ…」




コソコソと耳打ちし合って、唯兎が溜め息をついたと同時に歩南さんが帰ってきた。