赤い狼と黒い兎Ⅱ




“リョウ”と呼ばれる少年は一瞬怯みながらも強い眼差しであたしを睨んだ。


……あの目、どっかで…。


何故か少年の行動がスローモーションに見えた。


拳を出されれば避け、蹴られそうになればガードし、それの繰り返しだった。


そろそろ少年の息も上がってきて、周りは誰も居ないかのように静かだった。




「涼!!休むなッ」




そう、さっきから引っ掛かる事がある。


何で奴らは自分達で戦おうとしない?何故下っ端にやらせる?


単に負けるのが怖いからか?それとも……───




「オラァ!!!」



ビュンッ

顔面横スレスレで拳が通った。


…今のはマジで危なかった…。


するとチャリ、と金属が触れ合う音が微かに聞こえた。


チラリと少年の胸元を見れば、ゴールドのシンプルなネックレスとシルバーのドッグタグが見えた。


……今の…?


そして一気に頭の中に流れ込んできた映像。