小さな幸せ

「ずるい。」

円は手紙を握りしめて呟いた。

こんな風に一方的なさよならなんて受け容れられるわけない。

お互いに思いあっていたのが分かって、

円にはどうする事も出来ないなんて。

封筒の裏には住所すら書かれていなかった。

「ばか。気がきかないんだから。

 先生、私を誰だと思ってるの?なめないでよ。」

円にとっては、先生の現住所を調べるなんて私にとって簡単なこと。

成績優秀で、しかも有名人。

誰に不審に思われることなく、

手紙のお礼を書きたいと告げれば

容易に連絡先など手に入るのだから。