「隼斗さん、これ…お母様に頼まれた物です。」
私は紙手提げ袋を突き出した。
「何?」
「家元のお着替えが入っています。今日の会食に必要だからと、おっしゃっていました。」
「わざわざ、来てくれたの?」
「暇でしたから。」
私は目も合わせず、淡々と話した。
「ねぇ、この子知り合い?」
私は自分が場違いな所に来てしまったんだと、理解した。
こんなところ、早く出たい。
「では、お渡ししましたので、私はこれで…。」
私はお辞儀をして、後ろを向いた。
「ゆの、もう帰るのか?もうすぐ終わるから、メシでも食いに行こう。」
「えーっ?私が先に誘ってるのにぃ!?」
女の人は、隼斗さんのことが好きなんだ。
だから、一緒にいたいんだ……。



