「好きってさぁ、ただ傍に居るだけで安心したり。その人の事を考えるだけでドキドキしたり。気が付いたら、その人を必死に目で追ってたり……そんな難しい事じゃないと思うよ?」
「・・・・・・・」
「まぁ、今は分からなくても、そのうち分かるようになるんじゃない?」
「………そうなのかなぁ」
玲の言う、『好き』って難しい。
傍に居るだけで安心?
考えるだけでドキドキ?
必死に目で追う?…………ねぇ。
玲は難しい事じゃないって言うけど、
私には難し過ぎて分からないよ。
母親が他界してからバイトに追われ、
学校に通いながら生計を立てるのは至難の業。
同世代の女の子達が恋バナをしてる時、
私は必死に返済の計算をしていた。
――――それくらい、恋愛に興味は無かった。
親友の玲は美人だから、
それこそ毎日のように告白されているけど、本命はちゃんといる。
同じ市内の男子校に通っている、1つ下の子。
野球部のエースで、期待の星。
毎日部活があるらしく、デートは空いている週末にしてるらしい。
性格が短気な彼女が、彼の前だと嘘のように可愛くなる。
そんな玲が私は可愛いと思うんだ。



