洗面台には一本だけ、家族用とは別に、グラスの中に立てている歯ブラシがある。
夜くん用の歯ブラシだ。
夜くんはママやパパが家に居る時も、泊まりに来る事が時々あった。
ママは夜くんを気に入っていたし、パパはどう思っていたかは分からないけれど、夜くんは家族ともうまくやってくれていた。
家族に会わせられない様な彼氏と交際するよりは、オープンな関係を築く方が、パパも安心だったのかもしれない。
パパとママの旅行中、泊まりに来ていた事はさすがに言えないけれど…。
今となってはもう、この歯ブラシはお役ご免なのだけれど、私は捨ててしまうタイミングが掴めずに、パパとママも、私が捨てるまでは、勝手に捨てようとはしない。
夏休みのいつかの日、私を守らなければいけないと、洗面台までついてきて、その癖に私に嫌われたくなくて、大慌てで歯磨きをした夜くん。
「準備万端だよ!」って笑った夜くんに
、「ご褒美です。」とキスをしたあの日。
彼は言った。
「輪廻。早く誓いのキスがしたいね。
君が居なくて悲しい朝は見たくない。君さえ居れば、心を守れる。」
過去に見落としてきた事や、今更になって気付く、夜くんの言葉の重みなんかが沢山あった。
神様、早く夜くんを私に返してくださいと、何度も何度も思った。
私の気持ちはもうずっと、そこに縛られたままだ。
洗面台の鏡を眺めながら、私は一人で呟いた。
「ほらね、一人で来れた。やっぱり過保護だよ…。」
夜くん用の歯ブラシだ。
夜くんはママやパパが家に居る時も、泊まりに来る事が時々あった。
ママは夜くんを気に入っていたし、パパはどう思っていたかは分からないけれど、夜くんは家族ともうまくやってくれていた。
家族に会わせられない様な彼氏と交際するよりは、オープンな関係を築く方が、パパも安心だったのかもしれない。
パパとママの旅行中、泊まりに来ていた事はさすがに言えないけれど…。
今となってはもう、この歯ブラシはお役ご免なのだけれど、私は捨ててしまうタイミングが掴めずに、パパとママも、私が捨てるまでは、勝手に捨てようとはしない。
夏休みのいつかの日、私を守らなければいけないと、洗面台までついてきて、その癖に私に嫌われたくなくて、大慌てで歯磨きをした夜くん。
「準備万端だよ!」って笑った夜くんに
、「ご褒美です。」とキスをしたあの日。
彼は言った。
「輪廻。早く誓いのキスがしたいね。
君が居なくて悲しい朝は見たくない。君さえ居れば、心を守れる。」
過去に見落としてきた事や、今更になって気付く、夜くんの言葉の重みなんかが沢山あった。
神様、早く夜くんを私に返してくださいと、何度も何度も思った。
私の気持ちはもうずっと、そこに縛られたままだ。
洗面台の鏡を眺めながら、私は一人で呟いた。
「ほらね、一人で来れた。やっぱり過保護だよ…。」



