君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

握ったままだったスマホを掛け布団の上にボスン、と放り、もう一度布団に潜り込んだ。
目を閉じてももう、睡魔はやってきそうに無かった。

カーテンの隙間からは暖かそうな陽射しが入り込んでいる。
数ヵ月前までは、朝がくるのも憂鬱だった。
眠りに就く前に、朝目覚める瞬間に、夜くんの事をふと考えてしまう事が怖かったからだ。
今は、そうは思わない。あれ程嫌だった太陽の光も、今は優しいとさえ思えるのだ。

こんな休日ももったいないし、たまには部屋の掃除でもしよう。
ママにも毎日のように、部屋を片付けなさいって言われているし…。
それが終わったら、ウィンドウショッピングに出掛けるのも良い。

友達を誘っても良いのだけれど、今日は一人でブラブラと気ままに歩きたい気分だった。
バイト以外で一人で外出する事を考えていたら、少し大人になったみたいに思えて、ワクワクした気分になれた。

部屋の掃除をしようとたった今思ったばかりなのに、外出する事に気がいってしまい、そんな事もすっかり忘れて、支度をする為に洗面台へと向かった。
ママにはまた叱られるだろうけど、聞いているふりなら得意なんだ。ママ、ごめんなさい。