あの夏の日の夜、私の首を掴む細を思い出す。
まるで生糸の様に、食い込む細い指。
全ての温度を失った様な、冷たい掌。
生きたいと思った事。
あれ程までに純粋な恐怖を、私は忘れる事は無いと思った。
こんな物は、愛なんかじゃない、そう伝えたくて、もがいてももがいても、確かに存在しているのは、私と夜くんと、冷たい掌だけの様な気がした。
この世に思考や言葉なんて、初めから無かったのだと。
死んで手にいれる永遠よりも、生きて二人で歩く半永久的な未来を、諦めたくないと思ったのは、夜くんを愛していたからだ。
だけどほんの一瞬、「終わり」を意識した瞬間に、「始まりの為の終わり」に焦がれたのは、夜くんを失った時に、守れない自分自身の心に気づいていたからかもしれない。
「異常」は「正常」に形を変えながら、私を飲み込んでいた。
まるで生糸の様に、食い込む細い指。
全ての温度を失った様な、冷たい掌。
生きたいと思った事。
あれ程までに純粋な恐怖を、私は忘れる事は無いと思った。
こんな物は、愛なんかじゃない、そう伝えたくて、もがいてももがいても、確かに存在しているのは、私と夜くんと、冷たい掌だけの様な気がした。
この世に思考や言葉なんて、初めから無かったのだと。
死んで手にいれる永遠よりも、生きて二人で歩く半永久的な未来を、諦めたくないと思ったのは、夜くんを愛していたからだ。
だけどほんの一瞬、「終わり」を意識した瞬間に、「始まりの為の終わり」に焦がれたのは、夜くんを失った時に、守れない自分自身の心に気づいていたからかもしれない。
「異常」は「正常」に形を変えながら、私を飲み込んでいた。



