君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

「後悔した?」

サラリと効いてきた美神さんに、私は「何を、ですか?」と更に質問で返してしまった。

美神さんは言った。

「黒雅さんの事。
『こんな事になるなら、もっとああしたかった、こうしたかった。』って。
よくある話だけど。」

質問の意図が分かって、私は言った。

「しました。沢山しました。それはもう腐る程に。後悔なら…、いくらでも出来ました。
声に出さなくちゃ、黙っていても伝わらない、話をしなくちゃ分かり得ない事ばっかりだって、その量の多さを初めてしりました。
人間にはこんなにも言葉があるのに、伝えられた事、分かり合えた事、私が分かってあげられた夜くんの事なんて、何一つないんじゃないかって、悔やんで悔やんで、でも、悔やんでももう、伝えられないんだって痛感しました。
もう私、夜くん…に…、愛し…。」

「ツッキー…。」

私の意思とは反対に、溢れ出した涙の突然さに、私自身驚きながらも、私の掌をそっと包んでくれた美神さんの掌が温かくて、溢れる涙を止める事は不可能だった。

「ツッキーは、それでも、あんな事があってからも、それでも黒雅さんを愛しているって気持ちを受け入れたんだね。
ねぇ、ツッキー。何で、ただ愛しているだけなのに、愛しているって事が、どうしてこんなに擦れ違うのかなぁ…。」