君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

「つまり、結局はさ、ツッキーが考える『愛』も、もちろん私が考える『愛』も、他人から見れば『普通』じゃないんだよね。
そうなってきたらもうさ、『普通』って何だろう。誰が『普通』の基準なんだろう。基準となる人を決めたって、百人中、百人が賛同出来るわけじゃないもんね。
ツッキーが経験した事に眉をひそめる人は、もちろん居て、っていうか、眉をひそめる人の方が多いと思う。
なのに大抵の人は、『普通』を壊したがるじゃない？もっともっと刺激が欲しい、ってね。
無い物ねだり、っていうのかな。
黒雅さんは、きっと不器用だったんだと思う。
それでいてほんの少し、弱かったんだね。
ツッキーの事を大切に思えば思う程、どうすればいいのか分からなくなっていたんだと思う。
それでも、ツッキーの全て、命すら自分の物じゃなきゃ不安で、どうしようもなかったんだ。」

考えながら一気に言った美神さんは、アイスコーヒーで喉を潤して、切り分けていたベーコンアボカドバーガーをパクリと一口食べた。
ようやく味わえたハンバーガーに、美神さんはとても幸せそうな顔で、それでもまだ何かを考えている様な素振りを見せた。
だけど何やら物思いに耽っている様子だ。