君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

しばらくそのままの体勢で、背中をポンポンされていた。
だけどこの暑さ…背中も汗が滲んでいそうで、そんな背中をいくらシャツ越しだからって好きな人に触られるのは、あんまり嬉しくない。

「よ…夜くん…暑くない?」

「君を腕の中にしたまま脱水症状になれるのなら、あぁ本望だよ。」

「いや、それは間抜けかと…。」

「君を腕の中にしたまま干からびれるのな…」

「変わってません。」

グイと体を引き剥がされたかと思えば、左手は肩に、右手で髪の毛を弄ばれる。

「輪廻、どうしてそんな意地悪を言うの?
君と共に命が終わるのなら、それは終わりなんかじゃない。
二人の永遠の、始まりなんだよ。」

夜くんの瞳は哀しそうに、だけど奥深い闇のような、果てる事のない光を宿している。

「意地悪なのは夜くんの方です。
そんな終わり方、私は嫌よ。
二人で終わってしまうより、二人で生き続けたいのに。」

髪の毛を弄んでいた綺麗な指が、頬に移動し、唇をなぞり、そのまま口付けを。
まるで、永遠の愛を誓うように。

「君が望むなら何だって。
俺のすべては君のものなんだから。」