「黒雅さんとは、それっきりなの?」

うわっ、ベーコンアボカドバーガー食べようかなー!と、興奮しながら、美神さんはメニューブックの同じ所を何度もパラパラとめくっている。

放課後の学校帰り、スマホに美神さんから着信があった。
二人共バイトは入っていなかったから、お茶しようよって誘われて、私の高校の近くにある喫茶店に来たのだ。
美神さんは時々こうやって誘ってくれる。
気分なのだろうけれど、仲良くしてくれるのは、とても嬉しい。

制服のまま待ち合わせの喫茶店に現れた私に、「いいねぇー、セーラー服。」と、美神さんは何故か上機嫌だ。
おじさんみたいですねー、と笑ったら、「可愛い女の子は私得です。」と、本当におじさんみたいな事を、美神さんは言った。

美神さんは、結局アイスコーヒーとベーコンアボカドバーガーを注文して、私はアイスティーと目玉焼きハンバーグを注文した。
喫茶店なのに食事がしっかり出来る場所なんだなぁと、変に感心してしまう。
もしも私のバイト先が、こんなに食事の多い喫茶店だったら、上手く出来るか、あまり自信が無い。

「で、それっきりなの?」

全然関係の無い事を考えていた私に、お冷を一口飲みながら、美神さんは繰り返し訊いた。

「あ…、あぁ………。」

美神さんには、大まかな一部始終を話していた。
話を聞いた美神さんは、自分の事の様に怒り、悲しみ、そして私の気持ちにそっと寄り添ってくれた。
それからは時々こうやって、話を聞いてくれるのだ。