藤原さんは、ゆっくりと言葉を選ぶ様に、言った。

「自分の中に在る大切な物を失ってしまう恐怖に、この感覚は何だろうって、考える事が俺にも時々あるんだ。
でもね、そんな恐怖に、愛を理由にしちゃいけない。
愛は失って成就する物じゃない。
いや、そういう形も、確かに在るのかもしれない。
彼の場合は特にそれこそが、互いに満たされる愛の形だと、強く信じていた。
でもね、互いに『今』を奪いあって、未来を失う勇気があるのなら、何度擦れ違っても良い。
傷付けあったって、それでも壊れない愛に溢れたら未来を歩んで欲しい。
『命』こそが、愛の始まりなんだから。」