昨日からずっとポケットに入れたままのスマホが震えて、私はポケットからゆっくりとスマホを取り出した。
画面には、藤原さん、と表示されている。
全然気づかなかったけれど、昨日の夜からずっと、電話をかけ続けてくれていたのかもしれない。藤原さんって、そういう人だ。

電話に出ようかどうしようか迷ったけれど、私は「応答」の緑色をタップしていた。

「………は、ぃ…。」

絞り出した声は、自分でもびっくりするくらいにカサカサで、試しにゴクン、と喉を鳴らしてみたら、異物を飲み込んだ様な痛みを感じた。

「月城さんっ!?あぁ………。あぁ良かった。
ずと心配だった。ずっと謝りたかった。どうして君を連れて、一緒に逃げなかったんだろうって。」

藤原さんの声は、受話器越しでも分かるくらいに、後悔が滲み出ていた。
藤原さんの声を聞くと、不思議と安心出来た。
生きている、という実感と、そして、藤原さんが話す、「昨日の出来事」について。
確かに夜くんは居た、という事に…。