君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

死を目の前にすると、途端に、生きたいと強く思った。
当たり前にあった命とは、こんなにも簡単に消えてしまえる物だったのか。
怖かった。
目の前の死は色濃く、触れられそうな程の明確さで、口を開けて待っている。

怖い、怖い怖い怖い怖い………!

助かりたい、死にたくないと強く思いながらも、この期に及んでも尚、夜くんを救いたいと思う気持ちがあった。
もう間に合わないと納得しながらも、こんな終わり方は望んでいないと、叫びたかった。

叫びたいのに声が出ない。
なんでも良いから、ただめちゃくちゃに叫びたい。
声を出せない事が、恐ろしくてしょうがない。

もう本当に駄目かもしれない。
ふ、と私の中で何かが吹っ切れた時、自然と自分の掌に、力が入った。

薄い月明かりの中で、、夜くんがふわりと笑った。