やけに耳に馴染む声を、ただ意味を理解出来ずに聴いていた。

…壊す?
ナニヲ…?

「君と出会ってからずっと、自分の体に違和感を感じていたんだ。
日を追うごとに、俺は気づかされたよ。俺と君は、別々の人間であってはいけないんだって。
二人が一つじゃないだなんて、そんな事は間違っている。
俺達はどこで間違ってしまったんだろうね?どうして二つに別れなければいけなかったのか。
君と出会ってからの俺は、一つになれない体が苦しくて苦しくてしょうがなかった。
だけどこうして…。」

夜くんが優しく唇を寄せる。

「君と愛を確かめ合えた。」

彼の指先が、私の唇をなぞる。

「愛を囁く君の声も聴けたよ。だから、今なら、こんな風に二人を創ってしまった神様を許せる。
でも、もう時間だ。
俺達は、一つに戻らなくちゃいけない。
俺は君の中で、君は俺の中で生き続ける。
その先にはきっと、君と俺が望んだ世界が在る。
二人が正しく始まる為に迎える終わりだよ。
素敵だね。」

私の頬に触れる夜くんの指先が、少しずつ移動を始める。
藤原さんの血液が付着したままの指先が、次は私の首筋を這いずり回る。

ジリジリと後退していた私は追い詰められて、壁にトン、と背中を当てる。
もう、立っている力は残されていなかった。

体中の力が抜けてしまったみたいに、その場に崩れ落ちた。