君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

私は夜くんに引きずられる様にして、家の中に入った。
自分の家なのに、全然違う場所に思えてくる。

下駄箱の上に、うさぎのキーホルダーのついた、この家の鍵が置いてあるのを、視界の隅に認めた。
家の本鍵と、パパ、ママ、そして私用と、この家には全部で四本の鍵が存在する。
うさぎのキーホルダーのついた鍵は、私専用の鍵。
パパとママはそれぞれに自分の鍵を持って家を出たから、今は本鍵は私が、私が居ない間でも夜くんがすぐにうちに来れる様に、私専用の鍵を夜くんに渡してあったのだ。

今更そんな事はもうどうだって良い事なのに、どうしていくら彼氏だからって、自宅の鍵を他人に渡したりしたのだろうと思った。
これは全て最初から、私が招いた災難だったのだ。
後悔しても、もう遅い。

「輪廻、ようやく二人きりになれたね。さっきの害虫はいつか必ず抹消してあげるからね。」

「もう…、やめてください。本当にあなたが疑っている様な事は何も無かった。
あなたの気持ちを裏切る様な事をした私が、全部悪いんです。だからお願いします…。もうやめてください、こんな酷い事…。」

自分でも憔悴しきっている事が分かった。
酷く疲れて、喉はカラカラだった。