七時前の夏の夕暮れは、何となく切ない様な感覚になる。
泣きたい様な事も、憂う様な事も特には無いけれど、夏の夕暮れ特有の感情に、毎年不思議になりながらも、その正体は分からずじまいだ。

今ここにある物をしっかりと掴んでいなければ、何もかも失ってしまうような感覚。
泣きたくなんて無いのに、得体の知れない物が込み上げてくるのを感じていた。

夜くんと並んで歩きながら、無意識に彼のTシャツの裾を掴んでいた。

「…どうしたの?」

不意にTシャツの裾を掴まれた夜くんは、少しびっくりしていたけれど、私に振り向いたその表情は優しかった。

「あ…、ごめんなさい。何でもないの。
ただ、急に…夜くんが遠くに行ってしまう気がしたから。」

それ以上夜くんと目を合わせている事が何だか恥ずかしくて、私は俯いた。
突然何を言っているのだろうと自分でも思ったけれど、その行動は本当に自分でも理由が分からなかった。