バイト中の六時間ずっと、夜くんは席を離れず私を監視、彼に言わせれば「護衛」していた。
「ごめんね、お待たせ。上がったよ。」
スタッフルームで着替えを済ませ、客席の夜くんの元へと急いだ。
彼のカップには、六時間前と変わらない状態でブラックコーヒーがある。
時折ティースプーンでかき混ぜる仕草をしていたのに。
まるでカップの中身が何か別の物に変わると信じて疑わないように、執拗にかき混ぜていたのに、カップに口を付けた様子は無い。
「コーヒー、飲んでないの?」
「君以外が淹れたコーヒーを飲んだら、君が悲しむだろう?」
お店で提供された商品を飲んだからといって、私が悲しむとかそんな事はあるはずが無いのだけれど、私は曖昧に頷いた。
彼と交際を初めてもうすぐ一年になる。
近頃の行動には「異常」を含むようになってきた。
他人から見ての「異常」。
彼にとっては至って「正常」。
すべては「愛」で片付いてしまう。
「そっか。
ねぇ、それよりさ、今日は外食して帰らない?」
夜くんに反論したところで、彼の考えや、私に対する気持ちが変わるわけではないと分かっていたので、私は話題を変えた。
夜くんの気持ちが鬱陶しいわけではもちろん無い。
ただ、彼よりもずっと子供の私には、まだ少しだけ難しい問題なのだ。
「俺が、君の作った物以外を食べても平気なの?
俺はそんな事するくらいなら餓死するよ。
あぁ、でも君はそれを望まないだろうし、『普段は食べてるじゃない』なんて言われてしまえば元も子もない。
…分かったよ。今日は輪廻の希望通り、外食にしよう。」
ここまでくれば、夜くんの脳内は異常と正常がごちゃ混ぜだ。
彼だって、自分の言動に振り回されないのだろうか?
「矛盾」すらも「愛」。もうすべてが愛…。
うんざりするくらいに、歪んだ愛なのかもしれない。
「ごめんね、お待たせ。上がったよ。」
スタッフルームで着替えを済ませ、客席の夜くんの元へと急いだ。
彼のカップには、六時間前と変わらない状態でブラックコーヒーがある。
時折ティースプーンでかき混ぜる仕草をしていたのに。
まるでカップの中身が何か別の物に変わると信じて疑わないように、執拗にかき混ぜていたのに、カップに口を付けた様子は無い。
「コーヒー、飲んでないの?」
「君以外が淹れたコーヒーを飲んだら、君が悲しむだろう?」
お店で提供された商品を飲んだからといって、私が悲しむとかそんな事はあるはずが無いのだけれど、私は曖昧に頷いた。
彼と交際を初めてもうすぐ一年になる。
近頃の行動には「異常」を含むようになってきた。
他人から見ての「異常」。
彼にとっては至って「正常」。
すべては「愛」で片付いてしまう。
「そっか。
ねぇ、それよりさ、今日は外食して帰らない?」
夜くんに反論したところで、彼の考えや、私に対する気持ちが変わるわけではないと分かっていたので、私は話題を変えた。
夜くんの気持ちが鬱陶しいわけではもちろん無い。
ただ、彼よりもずっと子供の私には、まだ少しだけ難しい問題なのだ。
「俺が、君の作った物以外を食べても平気なの?
俺はそんな事するくらいなら餓死するよ。
あぁ、でも君はそれを望まないだろうし、『普段は食べてるじゃない』なんて言われてしまえば元も子もない。
…分かったよ。今日は輪廻の希望通り、外食にしよう。」
ここまでくれば、夜くんの脳内は異常と正常がごちゃ混ぜだ。
彼だって、自分の言動に振り回されないのだろうか?
「矛盾」すらも「愛」。もうすべてが愛…。
うんざりするくらいに、歪んだ愛なのかもしれない。



