君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

「あの…、忙しい時にすみません。こんな話、藤原さんにするべきではないのかもしれないんですけど…。
あそこ…禁煙席の2番。あの人、私の彼氏なんですけど。
その、すごく嫉妬深い人で。私が男の人と喋ってるだけで、何を考えて、何をするか分からない様な人なんです。
今日は男性スタッフが藤原さんだけなので、藤原さんに迷惑がかかったらいけないので、今日はあまり私と関わらない方がいいと…思います…。
自意識過剰に何言ってんだって思うかもしれませんが…。」

本当に私は何を自己申告しているのだろう。しかも忙しい時に。
藤原さんだってきっと、こんな時に何を言っているんだって思っているに違いない。
何を自惚れているのだと…。

私はそっと藤原さんの顔を見た。
彼は一瞬キョトンとしてから、いつもの笑顔を向けてくれた。

「そっか。大事にされてるんだね。
月城さんが困ったり、迷惑がかかる様な事はしないよ。
そっかぁー。じゃあ…、次のバイトの日まで月城さんに関わるのはお預けだね。」

冗談っぽくニカッと笑って、藤原さんは仕事に戻った。

私達はただ仕事をしているだけで、悪い事をしているわけじゃないのに、どうしてこんなに気を遣わなきゃいけないのだろうと思った。
藤原さんにも失礼な事をしてしまったし、今度きちんとお詫びをしよう。

取り敢えずは一安心だし、私も気を取り直して仕事に取り掛かった。