君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

歯を磨いたり顔を洗ったり、朝の支度の中で一番面倒だと思うのは髪の毛のセットなのだけれど、そうやって必死で支度をしている間も、夜くんは「そのままでも綺麗なのに。」なんて言って、嬉しそうに私を見つめている。

バイト先までは自転車で五分の距離。
朝早い日なんかは本当に助かる距離だ。
もちろん夜くんは、その五分の距離、今日は二人だから歩きでもう少しかかったけれど、その距離でさえもピッタリくっついて、離れる気などさらさら無いらしい。

バイト先のカフェに着いて、夜くんはそのまま店内の客席に、私は制服に着替える為にスタッフルームに入った。
スタッフルームには小さい扇風機しか無くて、外よりはいくらかマシだけれど、空気は少しだけムッとしている。

制服のポロシャツのボタンを一番上まできちんと留めながら、首回りにもう少し余裕があればいいのにと思った。