君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

カーテンを開けると、今日も憎いくらいの陽射しが射し込む。

「今日は用事あるの?」

眩しそうに窓の向こうに目を細めながら、夜くんが訊いた。

「昼過ぎからバイトなの。」

「ふーん。そうか、会社が休みで良かった。」

「夜くんは用事は無いんですか?どうせ私はバイトなんだし。たまにはゆっくり休日を過ごしてください。」

夜くんはいつも私を優先させているし、休日だろうが仕事帰りだろうが、暇さえあれば私の為に時間を遣った。
だから気遣いのつもりで言ったのだけれど、彼は簡単に考えを変える様な人ではない。

「馬鹿だなぁ、そういうところも可愛いけどね。
俺には君を守る使命があるんだ。」

馬鹿はどっちだ、と言いたかったけれど、その言葉を飲み込んで言った。

「土下座してでもお願いしますから、たまには自分の為に時間を遣ってください。バイト先に来てくれたって、相手が出来るわけじゃないし…。」

「輪廻が土下座して頭を擦り付けるなんて。この床、ブチ壊さなきゃいけないな。床の分際で。」

彼には私の懇願はまったく通じていない。
きっとどう反論しても無駄だ。

「………分かりました。
その代わりバイト先では大人しくしていてね。」

「あぁ、もちろん。大人しく君を見つめているよ。」

私の負け、と心の中で呟いて、気づかれない様にそっと溜息をついた。