君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

モゾモゾと布団から這い上がり、顔を洗う為に洗面所へと向かう。

その後ろからピッタリとくっついて来る彼。

「歯磨きですか?」

「歯磨き?面白い事を言うね。
自分の事なんていつだって良い。
洗面所まで君を無事に送り届ける方が先だろう?」

「…毎日この家で生活しています。大丈夫です。
それより歯磨きを怠る人とは…もうキスしませんよ!」

途端にダッシュで洗面所に向かい、歯ブラシを握り締める彼。
この近距離をダッシュしてまで…。

扱いやすいのか何なのか、ある意味難解な生き物だ。

「さぁ、準備万端だよっ。」とイケメンは今日も絶好調だ。

私を守りたいとか豪語していたくせに、今の私の背後はガラ空き、狙われたら即死ですよ、なんて言って困らせてやろうかとも思ったけれど、今はやめた。
夜くんが哀しそうな顔をする事は分かっていたし、今日は久しぶりにバイトが入っている。
急いで準備をしなくちゃいけなかったから、正直のんびりしている暇も無い。