君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

今度は二人して冷蔵庫を覗き込み、食材のチェックをする。
頬が触れそうな程の近さ。
チラリと夜くんに視線を移すと、横顔もやっぱり美しい。

「何?欲しくなったの?」

ジッと見ていると、夜くんの不敵な笑みと私の視線がぶつかった。


「欲しくなった、って何をですか。」

「強がらないで。俺のすべては君のも…」

「冗談言ってないで早く献立を決めましょう。
冷蔵庫の開けっぱなしは電気代の無駄遣いです。」

「輪廻。君は本当に現実主義だね。そういうの、時には脱ぎ捨てるべきな事もある。
あ、勘違いしないでね?俺の君への想いは、間違い無く現実だよ?」

「はい。ありがとうございます。で、ご飯、何にしましょうか?」

「ねぇ、輪廻。これはとても大切な話だよ。俺はね、」

「夜くん。私は今あなたと楽しくお料理がしたいです。
大事な話なら後でゆっくり聞きますから、今は楽しくお料理しませんか?」

「分かったよ。君がそう望むなら。」

私が望む事なら、彼はきっと何だってする。
私にそれ程の価値があるのかは自分では分からない。
ましてや夜くん程の人なら、私に執着しなくても代わりはきっと沢山見つかるのに…。

夜くんのその愛情に甘えて、私がとても嫌な女になれば、夜くんはどんな反応をするのだろう。
「それも輪廻だよ。」と受け入れるのか、狂気を見せるのか。
私には分からない事だらけだ。