君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

そう言われてみればお腹も空いているし、彼の提案に乗ることにした。
ママが居ればご飯が準備されている事が当たり前で、一人だと自分が動かなければ食べる物も無い事が当たり前。
両親が家にいないだけで、気付く事の多さに驚いた。

晩御飯は有り合わせの物で作ろうと、台所へ向かった。
出掛ける前にママがある程度の食材は置いていってくれたはずだから。

冷蔵庫を覗きこんでいると、後ろから夜くんの声がした。

「輪廻。俺が作るから座ってて良いよ。」

「そんなわけにはいかないよ。私がやるから、夜くんこそテレビでも観てて。」

「馬鹿言わないでくれ。
あんなくだらないものを眺めている暇があるなら君を眺めているよ。」

何の芸も無い私を眺めている方がよっぽどくだらないと思ったけれど言わなかった。
言っても夜くんの考えが覆る事はそうそう無いと、最近では私もちょっと気付いている。

「だったら一緒に作ろうよ。」

「良い考えだ。さすが俺の輪廻。賢いね。」

馬鹿になったり賢くなったり、私って忙しい。

新婚夫婦みたいだね、と嬉しそうに笑って夜くんが手を洗っている。
本当に夫婦になってもこんな風に半永久的に終わることのない愛を繋いでいけるのかなって思った。
変わらないものなんてきっと無いのに、彼なら叶えてくれる様な気もした。