君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

「あーあ。今日は宿題片付けようって思ってたのに。
もう一日終わっちゃうじゃん…。」

「輪廻となら、このまま一生が終わってしまっても、いや、その方が幸せだな。」

「…そういう問題じゃないです。
あー…いいなぁ。夜くんには宿題が無くて。というか、夜くんならこんな山積みの宿題もあっという間に片付けてそうですね。」

羨む私の頭を、子供をあやす様に撫でながら、夜くんは優しい表情で言った。

「輪廻は俺達大人が、子供よりも自由に見えるんだろう?
でもね、それは違うよ。
例えば夏休み。嫌な言い方に聞こえるかもしれないけれど、宿題さえやっていれば、大人は叱らない。
その大人は夏休みも無い人の方が多いし、やらなければいけない事、責任も宿題だけじゃないんだ。
でもね、一生懸命やろうとしている学生を、俺は尊敬するよ。学生としての責任をきちんと果たそうとしている子供は、きっと素敵な大人になる。
輪廻もそうだと信じてるよ。」

夜くんの言っている事をちゃんと理解出来るまで、そう、私が大人になるまでは、多分まだまだ時間が必要だけれど、素直に受け入れられる気もした。
夜くんが説教なんかじゃなくて、私と向き合ってくれたから。

「あぁ、そうだ。夜くん、私の宿題手伝ってくれませんか?
分からないところ、教えてくれるだけで良いから。」

「もちろんだよ。君の役に立てるのなら自害しても良い。」

そんな大袈裟な!
宿題を手伝って貰っただけで自害までされるくらいなら留年した方がマシだ。

「だけど輪廻。もうこんな時間だ。先に食事にしないか?
君さえ良ければ今日は泊まっていくよ。だから時間は気にしなくて構わない。
ゆっくり食事をしよう。」