君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。

「ねぇ、お前は誰を待っているの。」

海は、誰の事も待ってなんかいないのかもしれない。
この季節の海は寂しそうにも、開放的にも見えた。

去年の夏。
出会ったばかりの私と夜くんは、この海にやって来た。

「約束して。
水着を着ようなんて気は、間違っても起こさないでくれ。」

夜くんと来る、初めての海だった。
せっかくだから新しい水着が欲しかったし、どういう水着にしよう、何色が良いかな、なんて張り切っていた私のテンションが、急降下したのを憶えている。
夜くんだって、可愛い水着を着て一緒に海に行く事を、喜んでくれると、勝手に思っていた。

海に行くのに水着を着れないなんて、せっかくの夏、せっかくの海なのに信じられなくて、どうして、私は少し怒りながら夜くんに言った。
彼は至って冷静に、淡々と言ったのだ。