長い睫毛が影を作るその顔は、苦しげに眉根を寄せられていた。

そらは私のことなんてどうでもいいはずなのに、何でそんな表情をするの?


「俺以外に、いい奴なんてたくさんいるだろ」


何かを堪えるように、ぐっと拳を握りしめてそらが言う。


「昨日、あんたを抱きしめてたあの人とか」


ドクン、と心臓が重い音を立てる。

うそ……! あの場面、そらも見てたの!?

まさか、凛みたいに何か勘違いしてたりしないよね?


「そら……! あの人はただの友達だよ?」

「誰だっていいよ。俺が言いたいのは、あんたは他の人を選んだ方がいいってこと。俺以外の……誰かを」


どうして……何でそらじゃダメなの?

はっきり理由を言ってくれなきゃわからないよ──!


「そんなんじゃ納得出来ないよ……」


私の震えた声が、静かな美術室に響き渡る。


「ダメならちゃんとそう言ってよ! 私のことが嫌いって、はっきり言って! そうじゃなきゃ、いつまでも諦められないよ……」


堪えるのはもう限界で、次から次へと涙がこぼれ落ちる。

そらの姿が揺れて、霞んでいく。