「……私が足を怪我して入院してた時、ある男の子と出逢ったの。優しくて、紳士で……本当に大好きだった」


突然昔話を始めた私に、ピクリと反応を示すそら。

けれど、何も言わずに私の話に耳を傾けてくれている。


「その子のこと、ずっと忘れられなかった。そしたら突然彼によく似た人が現れて……。
私はいつの間にか、その人のことを好きになってたの」


“──そらのことを、好きになってた”


そう言ってゆっくり顔を上げると、

そらは驚きも、拒否したりもせず、ただ真剣な表情で私を見つめている。


溢れそうな想いを、ようやくちゃんと伝えられた。

そらには迷惑でしかないかな。

キミは今、何を考えてる?



──どのくらいの間見つめ合っていただろう。

数十秒、もしかしたら数秒だったのかもしれないけれど、私にはひどく長く感じられた。


それでも、息が詰まるようなこの時間でも早く過ぎてほしいとは思わない。

むしろ、そらと過ごす時間を一秒でも長く感じていたかった。


「……どうして」


沈黙を破ったそらは、目を伏せて呟く。


「どうして俺なんかをそんなに想えるんだよ」