「もう……ビックリさせないでよね!」


一人残された私は、独り言とともに大きく息を吐き出し、一気に脱力した。

だけど、心は跳び上がるような喜びに満ちている。


「よかったね、凛……」


ステージから降りた凛は、その裏で桜太くんと向き合っている。

少しすると、みるみる顔を真っ赤に染めた彼女は、“信じられない!”というように口元に手を当てていた。


恋愛は人を成長させるんだ。

意地っ張りで素直じゃなかった二人が、少しずつ変わっていく。


──私も変わりたい。

このままじゃ何も変わらない。

柚くんに想いを告げられず、何年も立ち止まったままの自分から。


「私も、会いに行かなきゃ……」


会って、ちゃんと気持ちを伝えてけじめをつけよう。

そう思ったら、足が勝手に動いていた。

いつもの、あの場所に向かって──。