「ここでいっか……」

「もー何なのよ、いきなり……!」


乱れた呼吸を落ち着かせながら日陰になっているベンチに座ると、凛も肩で息をしながら隣に腰を下ろした。

そして、すぐさま凛の両腕をがしっと掴んで体を向き合わせる。


「なっ、何!?」

「あのね? 凛、よく聞いて! 昨日のことだけど、あれは誤解なの!」


勢いに任せて単刀直入に言うと、凛は目を開き、はっとした顔をする。

でもそれは一瞬で、私から視線を逸らすとフッと笑った。


「誤解って……何のこと?」

「とぼけないで。桜太くんのことだよ! 凛……見てたんでしょ?」


黙り込む凛をしっかり見つめ、静かに彼女の言葉を待つ。

凛は揺れ動く視線を自分のスカートに落とすと、その上に置かれた手をキュッと握った。

でもそれもほんの一瞬で、すぐにパッと顔を上げて偽りの笑顔を作ってみせた。


「……ゴメン! そう、見ちゃったよ。二人のラブシーン!」

「だから、あれはそんなんじゃないんだってば」

「どう見たってラブシーンでしょ! 桜太ってば、やっぱり瑛菜のこと狙ってたんだ~」