触れないキス

「ねぇ瑛菜、タロット占いだって! やってみない?」


私のそんなちっぽけな疑問は、凛の楽しげな声によって掻き消された。


「へぇ~、タロット占い? ってここ……」


凛が指差す方を見ると、そこはそらのクラスだった。

思わず固まってしまった私に構わず、凛は教室の中を覗いている。

私も凛の陰からチラリと見やると、暗幕が張られた真っ暗な中でロウソクの火がゆらゆらと揺れていた。


「……なんか、いかにもって感じだね」

「ね。どうせ当たらないんだろうけど、楽しそうだから入ってみようよ♪」

「あ、ちょっと凛!?」


戸惑う私に気付くはずもなく、凛は怪しい雰囲気の教室の中へと足を踏み入れた。

あぁ、行っちゃったよ……。


「どうしよう……」


もしそらがいたら……と思うと少し躊躇ってしまう。

でも、暗いから分からないかな?

ていうか、別に会ったって普通にしてればいいわけだし……。


「……もういーや。入っちゃえ!」


色々考えるのが面倒になった私は、そそくさと凛の後を追った。