「今、俺がイジメられてると思っただろ」

「えっ!? そそそそんなことは」

「あんたは嘘がつけないタイプだな」


思いっきりキョドる私に、そらは淡々と言う。

どうやら彼は、ただ本当に一人でいるのが好きなだけらしい。

深刻な問題ではないみたいで少しほっとした。

でも、一人が好きってことは……


「じゃあ……私、やっぱり邪魔だったよね! ゴメンね」


怒らせてしまう前に離れよう。

そう思い、慌てて席を立とうとすると、「別に」と、そらのよく通る声が私の動きを制止した。


「一人でも見てくれる人がいれば、絵を描く意義があるし」


私をまっすぐに見つめるそらの瞳は、すごく綺麗で、どこか切なげで──。


「だから……好きにすれば」


突き放したようなことを言うくせに、どうしてそんな瞳をするの?

まるで“離れないで”と縋(すが)っているようにさえ思える。

もしかしたら、彼の心は言葉とは正反対なのかもしれない──。


気になって仕方ない。

もっと知りたい、そらのことが。


柚くんではない、彼に

柚くんを想う時と似た気持ちを、私は抱き始めていた。