「ねぇ、柚くんはどこに住んでるの? 住所は? 番号は? 立花さん知ってるんでしょ? 教えてよ!」

「いくら瑛菜ちゃんでも、患者さんの個人情報は教えられないのよ。ごめんね?」

「やだ……やだよぉ! 柚くんに会いたい……っ!!」


どうして教えられないの?

どうしてこの間会えなかったの?

どうして連絡先を聞いておかなかったんだろう……


後悔とやるせなさで、私はぼろぼろと涙を零した。

泣きじゃくる私の目線に合わせるようにしゃがんだ立花さんは、優しく肩に手を置いて微笑む。


「瑛菜ちゃんが退院した後も、柚希くんはあなたの話ばっかりしてたわよ」


私はほんの少し顔を上げた。


「……ほんと?」

「ホ~ント! 瑛菜ちゃんの笑顔はすごく可愛いから、ずっと笑っててほしいなって言ってた。まったく、マセた子なんだから」


立花さんは思い出し笑いをすると、すぐに真顔になって私をまっすぐ見据える。


「だから、もう泣いちゃダメ。柚希くんが瑛菜ちゃんのことを忘れるわけないんだから大丈夫よ!」