何故そらが現れたのかはわからないけれど、

私を遠ざけようとしながらも、どこか寂しげな表情を浮かべていた理由は、今ならわかるよ。


「そら……っ」


悔しい、憎い……!

柚くんはこんなに近くにいたのに、気付けなかった自分が

柚くんを死に追いやった病魔が

憎くてたまらない──。


とめどなく溢れる涙を拭って、何度も転びそうになりながら走った。

今でも大好きな、柚くんとそらを想いながら

走って、走って

ようやく公園にたどり着いた。


誰もいない、月明かりと電灯にだけ見守られる寂しげなブランコや滑り台。

その公園を抜けたあまり人目につかない場所に、海が見渡せる空間がある。


もう顔も身体もボロボロ。

それでも私は肩で息をしながら、引き寄せられるようにそこへ近付いていった。


木と木の間から、ぽつりぽつりと街の明かりが見える。

きっと晴れた昼間なら、遠くに海を見渡せる景色のいい場所なんだろう。

今は何も見えない、真っ暗闇だ。